ステートメント

someone’s past

私の実家は、明治時代より前に生まれた地域のお偉方が先祖です。勲章を受賞して家を興したそうです。客間には先祖の遺影が飾ってあります。その遺影を見つめる度に、私は長女として生まれたことを胸に深く感じます。しかし私はその重圧から逃げ出し、家を継ぐ者はいなくなってしまいました。年を重ねた父は先祖の土地を整理し、既に終活を始めています。家系図をまとめているようでした。私の実家のような家は星の数ほど存在するでしょう。他人からみれば興味などなく名前を知られることもないことだと思います。家と名字はいずれ消滅しますが、せめて私は忘れないようにしておきたいと思い、記録に残しています。

受賞者プロフィール

山崎由紀子

栃木県出身、東京都在住。

普段は写真とは異なる業界に属している。

その日常の合間に写真を撮りながら自身の内面やルーツを追求しています。

審査員 選評

遺影という特別な写真は写っている人物が無名であるほど、見る側にその人物を読み取ろうとする注意力が喚起されます。この写真はそれらが集合体として、しかも家系的つながりがあるという前提が、より興味を抱かせます。撮影者のコメントがとても個人的なものあっても、その写真の持つアノニマス感がそれを超えています。

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