THEME #42受賞作品2023FEB

CREATURE

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ステートメント

Ar

震災の最中、海までは程遠い地元の病院で父が亡くなった。
その頃、病室のテレビからは頻りに、飲み水の確保を促す映像が繰り返し流れていた。
父は、胸水が溜まりはじめた体で、その呼びかけに反応し、水を求めていた。
私はこの矛盾に混乱し、被災地のことはおろか、身辺のことすら考えられないままに時間を浪費していた。

葬儀を終え、私は、故郷へ繋がる川の澱を歩き始めた。
そこには、水に由るすべてが等しく不変であるかのような、人間の肉体と変わらずに在る様々な呼吸の欠片があった。
カメラの眼で採集したそれらは、他者へ、自身の生へ、世界の命へ、思いを巡らせるための呼び水に姿を変え、留まり続けている。

受賞者プロフィール

横澤進一

埼玉県出身、東京都在住
阿佐ヶ谷美術専門学校卒
土地を主とした写真撮影、自主レーベル「FUKEI」より写真集の発行
主な展示　
2021「GA TO Sí?」櫻木画廊
2021「クサビノ」オルトメディウム
2011「煙野」銀座ニコンサロン

審査員選評

これらのイメージの間には、色彩と雰囲気の一貫性があるように見えます。死と喪失を扱った包括的なテーマで、イメージは人生のはかない性質を反映し、魅力的であると同時に心を揺さぶる感覚を醸し出しているのです。しかし、それらは自発的かつ連想的に組み合わされたように感じられ、この作品の大きな背景が気になります。