IMAnext

THEME #46受賞作品2023AUG

PLANT LIFE

GRAND PRIXグランプリ

ステートメント

Mapocho River

パンデミックの最初の時期に、私はサンチアゴ・デ・チリのマポチョ川で写真を撮り始めた。 そこは私の家からほんの数ブロックのところにあり、人里離れた広大な空間と自然の刺激に満ちていた。 当時、私はフィルムを手に入れることができなかったので、大判カメラで期限切れの印画紙を使った。この場合、植物は減少していく川の中でたくましく生き延び、都会の真ん中にあるこの謎めいた風景の住人である。

受賞者プロフィール

Sebastian Mejia

1982年ペルー・リマ生まれ

ニューヨークのスクール・オブ・ビジュアル・アーツで写真学士号取得。
サンティアゴ・デ・チリのUniversidad Finis Terraeにて修士号取得。

サンティアゴ・デ・チリを拠点に活動する写真家、教師。 セバスチャン・メヒアの写真作品は、現代の大都市では気づかれることのないプリミティブな生活に焦点を当てている。彼の作品は、パリのカルティエ財団の「Nous les Arbres」(2019年)、ロンドンのフォトグラファーズ・ギャラリーの「Urban Impulses」(2019年)、サンティアゴ現代美術館の「Quasi Oasis」(2013年)など、チリ国内外で数多くの展覧会で紹介されている。

審査員 選評

今年のIMA nextに応募された興味深い作品すべてを丁寧に見ましたが、全体的に素晴らしい作品や、場合によっては写真や作品としてはそれほどでもないが、感性豊かで知的、そして誠実かつ心のこもった作品を見ることができて本当に嬉しかったです。心に残ったいくつかのシリーズに惹かれ続け、応募作品を何度も見返していました。

しかし、グランプリを選ぶのは困難を極めました。ある作品群は、それを支える言葉がなくとも、とても印象的でした。非常にデリケートで捉え難くありながら、しっかりとした重みもあり、そのすべてに惹かれました。そよ風のようであると同時に石のように堅固なシリーズでした。私が選んだシリーズのタイトルは、セバスチャン・メヒアの「Mopocho River」です。

今回のテーマは「Plant Life」ですが、この作品を気に入った理由はたくさんあります。この作品の被写体である「消えゆく川から立ち直る生き残り」としての植物は、心に響きました。

白黒の穏やかな、しかし説明的な一連の描写は、植物が生命にしがみついているだけでなく、陽に焼け焦げた川底や川岸にしがみついているように見えます。描写的で穏やかな記録、乳白色の暗いハイライトが雲ひとつない空の支えとなっています。足元には土、埃、砂、岩、そして植物の肢、繊細な葉の痕跡。ある時は静止しており、またある時はその動きが記録され、時折剥き出しになった植物の根のイメージも含まれています。

これらは繊細ながらも、とても印象的でした。無理な主張はなく、ただそれだけなのです。しかし、説明的でストレートであるのと同様に、一種の暖かさと詩的な性質があり、それはセバスチャン・メヒアの助けを借りて、植物自らによって表現されています。

私はしばしば写真のシンプルな描写力、感情や感覚を伝える強さに惹かれます。このささやかなシリーズは、まさにそうなのです。残念ながら登場するすべての植物が永遠に生き続けることはなくとも、このシンプルなスケッチはずっと残るでしょう。

また、まるで選ばれた被写体そのもののイメージから伝わってくるものを手渡す前に、作者がそれらを指揮しているかのように、エゴなく作られているように感じられる。

最後に、この作品のもうひとつの側面について触れたいです。これ以上この作品のレベルを引き上げるわけ(もうその必要もありませんね)ではないので、一つの余談です。セバスチャンが簡単なステートメントの中で説明しているように、この作品が好奇心、誠実さ、そして何よりも個人の意志から生まれたことをとても評価しています。結果にこだわらず、物事を見抜くことはいつも素晴らしいと思うのですが、この作品を作ろうとするセバスチャンの意志は、被写体を引っ張っていくのと同じくらい、被写体が彼をおぶっていたように感じられます。いくら作品が簡単そうに見えても、その裏で費やされたエネルギーも察せますし、セバスチャンが歩いた道のりについてもよく考えます。どの植物に目を向けて選ぶか、また潜在意識にある本能的な選択したのか。それは、被写体を観察するだけでなく、被写体の声に耳を傾けるかのように行われたのではないでしょうか。

チリのサンティアゴの街を縫うように流れる干上がった川が思い浮かびます。干ばつや洪水など、私たちが今生きているこの極限的な時代において、これらのイメージは、私たちが今どこに立つのかを思い起こさせるものでもあります。力強い植物たちが、同じ極限的な時代において明らかに影響を受けているのにも関わらず、何事にも、作品が制作された時に蔓延していた世界的なパンデミックにも、気づかずに生き続けていることを描写しているこのイメージ群はある意味希望に溢れています。

セバスチャンの作品が作られたのはパンデミックが発生した最初期で、多くの人が「Plant life」に気付き、自然を賞賛し始めた時期だったのではないかと思います。それを念頭に、これらのつつましい植物と、フィルムさえ手に入れることができなかったこの時期の世界的な生活移動制限に新たな意味のレイヤーを重ねているようです。セバスチャンの内なる意志はこの時代の障壁に打ち勝つものであり、それゆえ彼はフィルムではなく感光紙を使い、その結果としてこれらのイメージが生まれました。

私にとって、人々の意志が人生の障害をも乗り越え、何かしら実現する方法を見つけていることに感動します。これは必ずしも目に見えるものではないし、関連性があるわけでもないのですが、おそらくイメージの中にさりげなく封じ込められた隠れた要素なのだと思います。
イメージには魂があり、私はそれを信頼しているのです。

もちろん、メディウムの歴史や過去の作品に目を向け、このような作品と重ねて点と点を結びつけたいという誘惑はあります。ただ、私はそのようなことはしたくないのです。植物そのものがそうであるように、この作品も独立したものだと考えています。

作品を制作し、IMA nextのグランプリ受賞者に選ばれたセバスチャン、おめでとうございます。

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THEME #46 PLANT LIFE

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