ステートメント

あの記憶は誰

弟は病気の治療で毛が抜けた。前とは違う姿をしている自分を姉である私に撮られる時、一体どのように撮られるのか、気になった。撮影することだけ伝えると彼は箪笥を漁り、私の服を着て私の化粧品で化粧をしだした。 私はただ彼についていくように撮り始めた。 私と弟は同じ人間から生まれてきた。同じ成分でできている。いわば互いの分身なのかもしれない。私は彼を撮るといつも自分を撮っているような感覚を抱く。それほど私に近い存在なのに、その時のレンズの向こうには私の知らない誰かがいた。誰かと私の間には触れられない何かがあった。そこに映っていたのは誰なのか。その時の記憶にいるのは誰なのか。私は今でもずっと考えている。

受賞者プロフィール

井上 二胡

２００４年２月２２日、東京荻窪生まれ。１８歳。
武蔵野美術大学映像学科在学中。

審査員 選評

もう一つのエントリー作品は自写像だったが、弟を撮ったこのシリーズが心に響いた。自分を撮らずに提出した作品の中で一番よかったが、セルフと言えるかどうかがまだわからない。

関連リンク

• Instagram：@smile_niko_nico

  Instagram：@snmiicloe.0